【竹でみんなを驚かす!】放置竹林が毎年2万人を呼ぶ『まちの宝』に
こんにちは。
田上町 地域おこし協力隊のヤマグチです。
新潟で一番小さな町で始まった、地域の魅力を育てるプロジェクト『たがみバンブーブー』。
2022年にスタートしたたがみバンブーブーは初年度にも関わらず、わずか1ヵ月間のイベント開催期間で、来場者数はまちの人口の倍となる2万人以上となりました。
イベントが終わってから頂いたのは「また来年も楽しみにしてるよ!」という声。
年が明けて雪も溶け、まち自慢のたけのこが採れはじめる4月。
たがみバンブーブー2年目に向けた準備がスタートしました。
※本記事で取り上げている『たがみバンブーブー』の立ち上げ、1年目の様子はこちらからどうぞ。
まちの宝にあかりが灯った2022年
新潟県の真ん中あたりにある、県内で一番小さな町『田上町』。
この小さなまちには約17ha、東京ドーム3.6個分もの竹林が存在し、4月から5月頃になると非常に美味しいタケノコを楽しむことができます。
しかし、そんな自慢のタケノコと共に年々深刻になりつつあるのが、放置竹林を始めとする竹林管理の問題。
そんなまちの竹林に注目し、2022年に有志たちが集まりスタートした取り組み『たがみバンブーブー』は、初開催にも関わらずわずか1カ月で2万人(まちの人口の約2倍)を超える来場者を記録しました。
「せっかくやるなら本物を」と、バンブーアートのプロデュースを依頼したのは、世界で活躍する竹あかりのプロ集団『チカケン』。そして各会場に設置された500個近いバンブーアートは、子供から大人まで町内外の様々な方たちで構成される、100名以上のボランティア(通称「たけのこ団」)によって一つ一つ丁寧に制作されました。
主催側も想像できないほどの大盛況だった『たがみバンブーブー2022』が終わり、頂いた声の多くには「また来年も楽しみにしてるよ!」と、”たがみバンブーブー2023開催”への期待が込められていました。
年が明けて雪も溶け、まち自慢のたけのこが採れはじめる4月。
新たに実行委員会として組織も作り、たがみバンブーブー2年目に向けた準備がスタートしました。
・・・
2年目の新たな取り組み
メイン会場である『たがみバンブーブー竹林』は、手入れが出来なくなった放置竹林を借り受け、整備後にアート会場として作りこんだ場所でした。
しかし一年目に会場として整備できたのは、この竹林の3分の1程度の範囲のみ。
「残り3分の2の竹林も使ってメイン会場をさらに拡大しましょう!」
誰が口に出すこともなく「昨年よりも驚かす」ことは最低条件であり、メイン会場の拡大はまず取り掛かるべき仕掛けの一つだとメンバー全員が感じていました。
また今回も総合演出として一緒にプロジェクトを進めていくことになった『チカケン』さんの下見も入り、たがみバンブーブー2023でのメイン会場は”昨年の3倍の広さ”になることが決定しました。そして前回は無料だったたがみバンブーブー竹林は有料化することに。最後の最後まで議論は続きましたが、「無料だと今の体制では来場者を制御しきれない」「補助金などに頼らず自走できる運営を目指し次世代につなげる」などの点から、こちらも2年目の大きなチャレンジの一つとなりました。
「3倍の広さにしよう!」といっても、もちろん残り3分の2はまだ手つかずの荒れ放題なので、まずは整備が必要です。
前回と同様、町民の皆さんやたけのこ団の力を借りて、枯れ竹や折れ竹の伐採、撤去、通路の整地を進めていきました。
また同時に、バンブーアートに必要な竹の確保も実施します。
一年目より会場を拡大したことにより、前回の倍以上の竹が必要です。町内には多くの竹林があり材料には困らない——と言いたいところですが、実はバンブーアートに適した太さの竹を見つけるのは一苦労……「〇〇さんとこの竹林は太い竹がありそうだ」というなんともニッチな情報を集めながら、町内の竹林を探し回り、なんとか必要本数を集めて制作を進めるというギリギリの状況が続きました。
・・・
メイン会場の拡大に加え、2年目のもう一つの大きな変化が”教育機関との連携”です。
1年目もまちの中学校生徒はワークショップや竹林整備などに参加していましたが、他の教育機関にもたがみバンブーブーの取り組みや反響が伝わった結果、町内及び近隣のほぼすべての教育機関(幼稚園・幼児園2か所、小学校2校、中学校1校、高校1校、大学1校)と様々な形で連携することになりました。
そして田上中学校3年生においては、総合学習の時間をすべて利用し、オープニングイベントを一緒に企画、運営することが決定。生徒たちによる企画のプレゼン大会から始まり、古くからまちに受け継がれてきた伝統芸能や伝説などを次世代に伝える、さまざまな楽しいアイディアが実行委員会のフォローの元、着々と準備されました。
もちろん中学生の企画だからといって妥協はせず”本物を”。
各チームには県内で活躍するその分野のプロに講師とサポートを依頼。生徒たちの提案が生かされ、少しずつ形になっていく過程は、実行委員や講師はもちろん、生徒たちにとっては中々体験できない貴重な経験になったのではないでしょうか。
・・・
延べ1,000名以上のチカラをかりて
2023年、全国の夏の平均気温は、1898年の統計開始以降で最も高くなったそうです。
とにかく暑い日が続くなか、来たるグランドオープンに向けて、各会場や竹林では毎日のように整備や制作作業が進められました。イベント期間中も合わせると、製作・イベント開催に携わった人は延べ1,000人以上になります。
「さぁ今日は何やろうかねー」といつもニコニコで来てくれるお父さん。
「私、この作業ならずっとやれるわー」と市内から来てくれた学生さん。
「また外の作業かよー!しょうがねーなぁ」と愚痴りながらも黙々と作業をしてくれる常連さん。
毎日毎日、老若男女様々な人たちの手によって少しずつ会場が出来上がり、アイディアが形になっていった日々を思い返すと、大変だったあの毎日もとてもステキで価値のある時間だったなぁと、今は振り返ることができます(当時は作業に追われてそんなゆとりはありませんでしたが……)。
2023年9月16日。ついに迎えたイベント初日。
カウントダウンと共に道の駅に設置された点灯ボタンが押され、みんなで創りあげた各会場のバンブーアートに光が灯りました。
有料会場『たがみバンブーブー竹林』
有料会場『越後豪農の館 椿寿荘』
無料会場『やさしい道の駅たがみ』
オープニングイベント『良宵たがみ』
田上中学校生徒と一緒に企画したオープニングイベント『良宵たがみ』は、フィナーレとなる打ち上げ花火まで本当に多くの来場者でにぎわいました。
カフェ・ショップではみんなのアイディアがいっぱい詰まった商品たちが並び、ステージ出演では講師と一緒につくりあげた朗読や踊りが披露されました。
・・・
最後に
残暑の影響だけではない、アツイ熱気に包まれたオープニングから1ヵ月。
結果としては各会場に初年度を超える”2万7千人以上”が来場し、アンケート結果も9割以上が『満足』と回答。2年目となるたがみバンブーブーの取り組みはしっかりと、たがみを訪れた人を竹(=bamboo)で驚かせる(=boo)ことができました。
またイベント終了後しばらく経ってから、まちの小学校から嬉しいお誘いが。
なんと総合学習の発表会を兼ねた『おにぎりパーティー』への招待状をいただきました。
約束の日時に実行委員メンバーで学校へお邪魔すると、まずは生徒たちお手製の『たけのこおにぎり』を食べてみんなでパーティー!みんなでおしゃべりをして交流を楽しんでから本題に入るあたり、お互いのアイスブレイクも兼ねているようで、非常に考えられた流れです……今時の小学校はこんなしっかりしているのが普通なんでしょうか?汗
そしておなかもいっぱいになり、ついに始まった発表会ではみんなパソコン片手に、大人顔負けの姿で学習内容をバッチリ披露してくれました。ここまで竹やたけのこのことを理解し、プレゼンできる小学3年生は全国でもほとんどいないのではないかと思う出来栄えで、学校を出てからも「クオリティやばかったね…」とメンバー間でも少し余韻が残るほどでした。
10年後には成人しているみんなが、どれだけこの町に残っているかは分かりません。それでも、たがみバンブーブーの取り組みがこうして次の世代に伝わり、つながっていく、その一歩目が目の前で見られた気がしたとてもいい1日でした。
・・・
今回は、2年目となりさらに成長したまちのプロジェクト『たがみバンブーブー』についてご紹介しました。引き続き、ヤマグチが得た田上町のモノ・コト・ヒトを少しずつ発信、共有していこうと思います。
もしお時間ありましたら他の記事や町のHP・SNSなども覗いて頂けたら幸いです。
田上町について、お時間を割いて下さりありがとうございました。
地域おこし協力隊のヤマグチがお届けしました。