まちのお寺にある地獄絵を独学で分析したので解説してみる
こんにちは。
地域おこし協力隊のヤマグチです。
先日、田上町のお寺「円福院」にお邪魔してお話を聞く機会がありました。
数十年ぶりにご本尊のご開帳があるとのことで、お寺の歴史などを説明頂き、お堂の中も見学。
写真撮影も快く了承いただいたので、バシバシとシャッターを切り帰宅しました。
いきなりですが「地獄絵」ってご存知ですか?
「そんな悪いことしてると地獄に落ちるよ!」みたいな発言はどこで習うわけでもなく、一度は聞いたことがあるフレーズかと思います。
地獄絵はまさにその「地獄」の様子が描かれた作品です。
ご住職によると地獄絵のあるお寺は多いそうですが、今回伺った円福院にも例に漏れず「地獄絵」がお堂の一角に飾られていました。
過去ヤマグチも地獄絵を見たことはあるはずですが、じっくりと眺めるのはこれが初めて。これが見れば見るほど興味深い。
撮った写真を自宅で改めて見ても「これはなんだろう?」が浮かぶばかりです。
さっそく「地獄絵 解説」などでgoogleさんに聞いてみると
桁がちょっと……
子供にも容赦ない……
次々と分かる、かなり刺激的な「地獄」のアレコレ。
そんなこんな調べているうちに、結局書かれていた描写すべてについてヤマグチなりの分析が完了してしまいました。
歴史の一部を一人で紐解いているような、そんな高揚感を味わいながら調査しました結果を、今回は解説しようと思います。
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「地獄」について調査開始
イマドキの30代なヤマグチはまずネット検索から入ります。
次々と出てくる情報をまとめるとどうやら平安時代に書かれた「往生要集」という書物がすべての起源のようです。
その他かなりの情報も拾えて、少しづつ円福院の地獄絵が理解できるようになりました。
ただネットの限界ももちろんあります。
次は図書館にて調査。
まちの図書館では欲しい情報が得られず、隣町の図書館へ遠征。
地獄絵について書かれた本をバッチリ3冊ほど見つけ、円福院の地獄絵と内容を照らし合わせていきます。
学習コーナーの一角で、「地獄」と書かれた真っ赤な本3冊を広げながらメモを取るヤマグチのうしろ姿は、中々に鬼気迫るものがあったのではないでしょうか。
六道について
円福院の地獄絵に入る前に、「六道」と「地獄の構造」について少し解説をします。※「地獄の構造」については少し長いのでお時間ある時にどうぞ
そもそも悪いことをした人は地獄に落ちて、そうでない人は天国に行く、のような「天国か地獄」という二者択一のイメージをお持ちの方が多いかと思います。
しかし、これは仏教上誤りです。
悟りを開いた人を除くと、死後の行先は6カ所。
「地獄道」
みなさんがイメージする通りのあの地獄です。
「餓鬼道」
さまざまな鬼に生まれ変わる世界。じわじわと生きながら苦しみを味わう系。
「畜生道」
鳥や獣、虫など34億あるという種類からどれかに生まれ変わる世界。
「阿修羅道」
見た目は人の世界に近いが、常に戦が絶えず戦っては死にを繰り返す世界。天気は基本雷雨。
「人道」
いわゆる人間の世界。上4つの世界に比べれば幸せだが、四苦八苦と呼ばれる苦しみは常に付きまとう。
「天道」
いわゆる天国や天界と言われる世界。とっても幸せな世界だが、ここも永遠にはいられない。離れる際には地獄よりツライ苦しみがあるそう。
これら六つの世界のことを総じて「六道」と言います。
「往生要集」をまとめた源信さんによれば、基本的に人はこれら六道を永遠に輪廻し続けるとのこと。だから念仏を唱えてこれを抜け出そう(悟りを開こう・解脱しよう)!という教えを広めて回ったそうです。
地獄の構造について
地獄道については「往生要集」にも一番詳細に書かれています。
それによれば地獄はなんと8階層の構造になっており、罪の内容により細かく行先が決められます。もちろん下に行くほど与えられるメニューは過激に……この「八大地獄」と呼ばれるものをざっくり説明しますと、
このような感じ。
各地獄のメニューは実際もっと多岐にわたります。興味のある方は調べてみてください。刑期を見てわかるように一番軽い等活地獄でさえ、未だに刑期を終えた人間はいないことになってしまいます……
また、各地獄の広さも異常に広いです。
等活地獄から大焦熱地獄はそれぞれ1辺が約12万㎞(地球約3周分)の立法体の形になっています。最後の阿鼻地獄に至っては1辺約100万㎞の立法体の形だそうで、「ここに落ちる人が多いんだぞ」という気持ちがビシビシと伝わります。
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分析① そもそも「地獄絵」ではない
それでは円福院の地獄絵の解説に入ろうと思います。
まず第一に、先程説明した「六道」の知識があると、どうやらこれは地獄だけについて描かれたものではないことが分かります。
もちろん、地獄道について描かれた部分が大半ではありますが、「餓鬼道」「畜生道」「阿修羅道」「人道」「天道」の描写もしっかりみられます。
つまり正確には「地獄絵」ではなく「六道絵」というのが正しいはずです。
それぞれの描写について解説します。
以上、これに地獄を含めて六道すべてが描かれていることが分かると思います。
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分析② 死後から閻魔王の裁きまで
中心に大きく描かれているのが「閻魔王」による審判の様子。
閻魔王(閻魔大王)については多くの方が耳なじみのある名前だと思います。
しかし、裁きを下す王は閻魔王だけではありません。実は他にも9人の王がいて、閻魔王含めた10人(十王)で死後(死去~三回忌まで)の裁きが行われます。
閻魔王は十王の中で5番目、死後35日目の裁きを担当します。4番目の王(五官王)によって、すでに地獄行きが決まった者をどの地獄に落とすか決めるのが閻魔王のお仕事です。
円福院の六道絵にも、死後から閻魔王の裁きまでの様子が見てとれます。
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分析③ どれも最悪な地獄メニュー
閻魔王によって地獄の裁きを受ける死者たちの様子は中には目を覆いたくなるような描写も多く、非常に気が滅入ります……
円福院の六道絵に描かれている地獄メニューの中から一部を抜粋して解説します。
その他にも黒縄地獄で切り裂かれる者、衆合地獄で岩に押しつぶされる者、等活地獄で極熱のドブに入れられている者など、様々な地獄メニューを受ける様子が描かれていました。
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最後に
以上、円福院にある六道絵の分析と解説でした。
ヤマグチが参考書片手に独学で分析した結果ですので、解釈が誤っている部分もあるかもしれません。何卒ご了承ください。(ちなみにヤマグチは日本によくいる無信仰者です)
円福院さんに伺った当初は、お寺の成り立ちや近くの温泉地の話などをnoteにまとめようと思っていたにも関わらず、まさかそれが「地獄」の解説になるとは思いもよりませんでした。
図書館で地獄の参考書を読み漁った日の夜は、なんだかとても不安な夢を見たことを覚えています……
付け焼き刃ではありますが今回のような地獄絵の解説を、当時は「絵解き」と呼んでいたそうです。各地のご住職や専門職の方が人々に地獄絵の絵解きをすることで「悪いことをしてはいけないよ」と教えてまわったのだとか。
ヤマグチなりの荒削りな絵解きではありましたが、何か一つでも感じた、伝わるものがあったなら幸いです。
地獄に落ちないよう、悪いことはダメ!絶対!
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今回は、田上町のお寺「円福院」さんの地獄絵について独学で分析し、その解説をまとめてみました。引き続き、ヤマグチが得たモノ・コト・ヒトを少しづつ発信、共有していこうと思います。
もしお時間ありましたら他の記事や町のHP・SNSなども覗いて頂けたら幸いです。
田上町について、お時間を割いて下さりありがとうございました。
地域おこし協力隊のヤマグチがお届けしました。