ヒノカミ神楽?うちの町では「ゴシャ神楽」です
こんにちは。
田上町 地域おこし協力隊のヤマグチです。
例に漏れずヤマグチもしっかりアニメはチェックした「鬼滅の刃」。
主人公の炭治郎が「ヒノカミ神楽!」と技をくり出すシーンは全国、いや全世界で一体何回再生されたのか想像もつきませんが、一度は耳にしたことがある人も多いはず。
しかし、そもそも“神楽”ってやつをヤマグチは何となくでしか理解していなかったのですが、皆さんはいかがでしょうか?
鬼滅の刃の作中では、炭治郎のお父さんが雪のなか舞を踊る姿が描かれていました。
イメージをそのまま言葉にするなら「お面をかぶって、踊る感じ」とかでしょうか……
みんなの先生“Wikipedia”によると以下のように説明されています。
どうやら雰囲気は炭治郎のお父さんが踊るイメージと遠くなさそうですし、“神道”ということは、お寺でなく神社で行われることが一般的なようです。
「ゴシャ神楽って知ってる?」
ある日、そう声をかけてくれた道の駅の副駅長さんに連れられて向かったのは、まちの文化遺産にもなっている神社でした。
“ヒノカミ”ではありませんが、ヤマグチが住むまちに約400年以上昔から伝わるリアルな神楽を、資料映像と共にご紹介しようと思います。
まちの神社へのお誘いを受けて
道の駅から車で5分ほど走って到着したのは、近くの川にホタルが出ることでも有名な「五社神社」。
町内の移動は、いつも車で数分から十数分で済むのがこのまちのいい所でもあります。さすが新潟で一番小さい町。
「こんにちわー」と神社の隣にある立派な家を訪ねると、出迎えてくださったのは五社神社の宮司さん。
そろそろ板についてきた「初めまして!田上町で地域おこし協力隊やっています(以下略)」の挨拶を終えて、さっそく神社を案内して頂きました。
畳の気持ちよさを久しぶりに足で感じながらシャッターを切っていると、壁に掛けられた”神楽”の様子らしき写真を発見しました。
木槌を持っているし、イメージ通りなら大黒様?
他の七福神も出てくるのかな?
そんなことを思いながら一通り見学も済み、宮司さんのご自宅で本題の「五社神楽」のあれこれをお伺いしました。
・・・
次々と出てくる面、面、面
「これが資料です」と言って渡された冊子には五社神楽の歴史や成り立ち、それぞれの舞についての解説などが事細かに記載されていました。
少し脱線しますが、大事な歴史や文化は口伝など残らない形で伝えるのでなく、こうしてしっかりと情報をまとめ、かつどこからでも見られる状態、つまりオンラインでの保管が大切だと思います。今後どんどん伝える人が減っていく日本はなおさらに。
「なんかはっきりしないんだけど400年ぐらい続いたらしいよ、舞もどんなものがあったか分からないけど……」なんて悲しい伝え方にならないよう残せるものは残していくべき。
こうしてnoteに記事を投稿していく行為も、まさにそれ。
ヤマグチのフィルター越しにはなりますが、引き続きまちのストーリーを記録していきたいと思います。
——話を戻します。
資料を見ながらお茶を頂いていると、「衣装見ます?」と宮司さん。
「もちろん見ます!」と返事をしたら次々と出てくる面、面、面。
いま実際に行われている舞は9つ、そして元々は14~15の舞があったという五社神楽。
ずらっと並べられた面を目の前にすると、流石に少し感じるものがあります……
次に出てきたのは衣装。
こちらも当然舞によって使い分けるので何着も登場。
木製の面や衣装の触り心地やにおいなど、どこか懐かしいと感じて思い出されたのはヤマグチが幼少期に地元で踊っていた「獅子舞」でした。
その獅子舞も神社を出発して民家をみんなで練り歩きながら踊るものだったので、おそらく神道の行事のはず。ルーツはなんだか近そうです。
夜の公民館に地域の子供たちが集まって練習したのも、小学生の頃の楽しい記憶ですが、我が地元も例に漏れず最近は子供が少なくなり、昔のような獅子舞は行っていないようです。
宮司さんのお話では、五社神社も後継者不足が大きな課題の一つ。
さすがに「私で良ければ」なんて無責任なことは言えません。
ヤマグチがいま出来ること……それは記録、そして伝えることぐらい。
さっそく役場からお借りした五社神社の映像の一部と合わせて、9つの舞をご紹介しようと思います。
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現代に残る9つの舞
現在残っている舞は「榊の舞」「悪魔祓い」「三座返すの舞」「地割りの舞」「羽返すの舞」「華献の舞」「四方形の舞」「恵比寿舞」「大黒舞」の9つ。
それぞれの舞に意味があり、お面や衣装はもちろん、手に持つ道具も全員異なります。
個人的にオススメは「地割りの舞」と、名前からもとっつきやすい「恵比寿舞」。
さすがに振付の意味や踊りのストーリーが分からないと「ふーん」ぐらいで終わってしまいますが、それが分かれば「なるほどー」と見方も変わります。
特に恵比寿舞はコメディのサイレント映画を見ている感じで楽しい。
大きくこけるリアクションをしたり、ストーリーを伝える分かりやすいジェスチャーなど、9つの舞の中でもかなりエンタメ色が強い内容となっています。
個人的には結局「人間にある見栄」を表現しているという説明も面白いなぁと思います。
下にリンクを貼った映像は平成十二年に制作されたビデオテープから一部編集をしたものです。各動画の冒頭に舞の意味が説明されるので気になる舞があったらぜひ見てみてください。
【榊の舞】
会場を清める舞なので、いまでも神楽のスタートに必ず舞われているそう。
【悪魔祓い】
仮面はあの「スサノオ」。現代でも比較的名前が知られている神様でしょうか。
【三座返すの舞】
【地割りの舞】
しっかりと足で”鬼”と書いていますので要チェック!
【羽返すの舞】
【華献の舞】
9つの中で唯一女性の面。
【四方形の舞】
スサノオ再登場。今度は二刀流。
説明にも「東龍、白虎、朱雀、玄武」と四神が出てきたりして、もしマンガ化したら男の子人気がなかなか高そうな舞です。
【恵比寿舞】
五社神社のチャップリン。
恵比寿舞→大黒舞の流れで一気にお客さんも盛り上がっていきます。
【大黒舞】
みんな大好きな大黒様でフィナーレ。
お菓子が見えた途端、子供たち全員がソワソワしだすのがかわいいです(1:30あたり)。
いかがでしょうか。
皆さん”推しの舞”はありましたか?
もちろん年月が経つ中で表現方法や内容などは少しづつ変わってきていると思いますが、15世紀から16世紀に始まった神楽が今もこうして舞われていると思うと感慨深いものがあります。
もしかしたら”ヒノカミ神楽”にも面や衣装、道具や舞の振り付けに、細かな意味があるのかもしれません。
今回紹介した”ゴシャ神楽”はマンガでもアニメでもない、言わばノンフィクションです。
小さな町の素朴な神楽かもしれませんが、少しでも興味を持っていただけたなら幸いです。
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最後に
映像でしか五社神楽を見たことがなかったヤマグチでしたが、先日、町のとあるイベントで五社神楽を観る機会がありました。
大黒舞の前にはもちろん恵比寿舞も披露されましたが、会場のお客様の中で舞の意味やストーリーを把握している方はほとんどいなかったのではないかと思います。
色々とお話を聞いたり、資料を読み込んだ身とすると、そんな状況が少し残念に思えました。
今回は神楽を題材に取り上げましたが、皆さんの地元に続いている文化や伝統などがあれば、ぜひ少しだけでも興味を持って観たり聞いたりしてみてください。
けっこう身近なところに「意外とおもしろい」とか「これすごいじゃん」みたいな発見が眠ってるかもしれませんよ。
今度実家に帰ったときには、昔ヤマグチが踊っていた獅子舞の話でも親に聞いてみようかと思います。
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今回は、まちに400年以上引き継がれてきたとされる、五社神楽についてご紹介しました。引き続き、ヤマグチが得た田上町のモノ・コト・ヒトを少しづつ発信、共有していこうと思います。
もしお時間ありましたら他の記事や町のHP・SNSなども覗いて頂けたら幸いです。
田上町について、お時間を割いて下さりありがとうございました。
地域おこし協力隊のヤマグチがお届けしました。