【桐の木工教室】”やわらかい”は優しくて楽しい
こんにちは。
田上町 地域おこし協力隊のヤマグチです。
小学校の「図工」はだいたい“5”の評価だったヤマグチです。
確か中学校の「技術」でも“A”評価で、この頃ぐらいから「自分は器用な方なんだ」と自覚し始めていた気します。
プラモデルやミニ四駆、自由研究で買ってもらった電子工作キットなど、基本的に手を使って何かを作ることは得意だったし、何より楽しかった。
たまたま見つけたまちの木工教室に参加して、そんな懐かしい記憶がいろいろと甦ってきました。
皆さんは最近、自分のために自分の手を使って何か作りましたか?
久しくそんな行動から離れていたヤマグチにとって、柔らかく扱いやすい桐を使った木工教室は、今まで眠っていたワクワクする懐かしい感覚を取り戻すのにちょうどいい時間でした。
200年の伝統「加茂桐箪笥」
ヤマグチが住む田上町のおとなり「新潟県加茂市」には200年の伝統がある「加茂桐箪笥」を作る工場や職人が数多くいらっしゃいます。なんでも全国の桐箪笥の70%はここで作られているというから驚きです。
桐タンスと聞くと思い浮かぶのは「高級品」というイメージではないでしょうか?しかし話を聞くに桐を用材として使っているのは日本ぐらいだそうで、海外では桐を外来種として駆除対象に指定している地域もあるとか。
湿度を保つために伸縮し防虫効果もあるという桐。「火事になっても中の衣類は無事だった」なんていう話も聞くほど木材としての機能性はバツグンのはずですが、なぜに世界では使われないのか……話が脱線しないよう、これは宿題とさせて頂きます。
今回はそんな加茂桐箪笥を製作、販売している事業所のひとつ「茂野タンス店」さんが開催する木工教室へお邪魔しました。
田上町内にある茂野タンス店さんは、まもなく創業100年を迎える老舗。
“人と地球にやさしい桐タンス”を掲げ、伝統的な桐箪笥はもちろん、洋室にも合うようなモダン家具や玩具、小物なども取り扱います。
代表であるシゲノさんはまちのイベントにも積極的に参加されており、協力隊としてまちに移住したてのヤマグチにも気さくに声をかけてくれた方の一人。シゲノさんをはじめ、このまちの皆さんがいつもウェルカムな態度で接してくれることに感謝です……
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歴史を感じる工場
木工教室当日。「こんにちはー今日はお願いします!」と扉を開けると既に他の参加者の皆さんがチラホラと。
かなづちやカンナを使う工程があったものの、ヤマグチ以外は全員女性。この日がたまたまだったのかもしれませんが、意外と興味を持っている層は幅広いのかもしれません。
全員が揃ったところで、みんなで自己紹介。
3グループに別れ、それぞれ一人づつ指導役の職人さんが付きます。
狙ったのか偶然か、茂野タンス店さんには30代から60代まで各世代の職人さんが揃っており、ヤマグチは一番若手の30代の方とマンツーマンで作業を進めることとなりました。
「それじゃ案内しますので荷物を持ってこちらに来てください」
シゲノさんが今日の作業場へ参加者を案内すると、工場には年季の入った道具たちがずらり。
「今回皆さんに作ってもらうのはこのスツールです。それじゃあ早速始めましょうか」と言われている最中もこの空間のアレコレが気になり、最初の数分はあまり話を聞いていなかった気がします(ごめんなさい)。
また作業場の外にも大小様々な機材がたくさん。
たまたま窓から入るこの時間の光がキレイだったのか、ただヤマグチの個人的な感性にヒットしたのか、どこを切り取ってもすごく絵になります。
人工的には作れない、今まで経過した時間だけが生み出せる空気、質感に何かを感じずにはいられません。
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伝統技術と職人のワザ
「それじゃあ改めて、今日はスツールを作ります。寸法を測って既に切り出してあるキットを用意しているので、これをどんどん組み立てていきましょう」
作業台の上に置かれているのはキレイに加工されている桐の板。ここから休憩含め約3時間でスツールが完成する予定です。
「のりって普通の木工ボンドとかなんですか?」
「そうですよ。市販のやつです。」
木工ボンドが普及する前はご飯粒が使われてたそう。きっと当時木工ボンドが出た時は業界の人たちは大騒ぎだったのではないでしょうか。
「じゃあボンドを塗る前にここで先に“キゴロシ”をしておきます」
「……キゴロシ?」
「はい、木に殺すで“木殺し”です」
やたら物騒なネーミングですが、要は工具で木を叩いたり、強く押すことで少し表面をへこます技術を「木殺し」と言うそうです。
桐以外の木材でも使われる技術のようですが、特にやわらかい性質の桐はあまり力を入れなくても簡単に殺せるため、初心者のヤマグチでも殺しやすかったです……使い方合ってますよね?
また、へこんだ部分は水分を含ませると元に戻るそうなので、パーツ同士を継ぐ部分は基本的に木殺しする前提で若干寸法を大きく作っているとのこと。
木材の特性を利用した、聞けば納得の非常に単純だけどおもしろい技術です。
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「今回作るスツールは鉄くぎの代わりに”木くぎ”を使います」
バラバラと板の上に広げられた木くぎは、鉄のそれよりはだいぶ優しそうな見た目。やわらかい桐とは言え、さすがにドリルで一度穴を空けてから打ち込んでいきます。
「じゃあかけてみましょう、カンナ」
「……ん?そんないきなりやっていいんすか?汗」
皆さんカンナって持ったことありますか?
予想以上に重たくてまずそこにびっくり。小さい頃に授業かなんかで使ったような記憶があったのですが夢だったのかもしれません。10回も往復する頃には指がぴくぴくしていました。
見よう見まねで引いてみるヤマグチに「上手です上手!」と言ってはもらったものの、平行に最初から最後まで引ききるのがすごく難しい……「そうですかぁ(照)」なんて喋ろうもんなら「ガッ」とカンナが途中で止まります。
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途中休憩をはさみながら順調に進むスツール作り。
しかしカンナをかける職人さんが手を止めたと思うと「アッ……」と言って板を指さしました。
「貫通してましたね笑」
なんと途中ヤマグチがドリルで空けた穴が横にそれて貫通していたことが発覚。
大きな穴ではないものの、縦の切れ目がしっかり分かる状態でした。
「あーまじっすか……」とがっかりしながら職人さんを見るとニコニコしながら取り出したのはノミ。「直せるんで大丈夫ですよ」と言いながらノミで穴をグリグリと広げていきます。
そこからはあっという間の出来事。
2分もかからないうちに穴はキレイになくなってしまいました。
うーん、スゴイ……これは誰が見ても分かりやすくスゴイ……
何度か家にある完成品を調べてますが、素人目にはもうこの修繕箇所は分かりません。
200年の伝統技術、恐るべし。
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最後に
結局魔法のような修繕技術もあり、無事スツールは完成!
他2グループの皆さんの作品と並べて記念撮影をさせて頂きました。
写真だと伝わりづらいですが、実は3台とも最後の仕上げ方が異なります。天板や脚の角をどれだけ丸くするかどうかの違いだけで、実物をみると表情が全く違うのがおもしろい。きっとこういった細部までこだわれるのが、受注生産のいい所なんですね。
大量生産、大量消費なんていう世界とはかけ離れた空間での3時間は、異様に楽しかったです。
モニター越しにポチッとすれば数日で届く、同じような見た目の商品たちに囲まれている毎日に慣れすぎて、気付いたら「自分で作って自分で使う」というとても原始的な行為がすごく新鮮で楽しいことに感じるカラダになっていました。
家に持ち帰ったスツールを奥さんに見せて「楽しかったよー」と報告しながらふと、将来の夢に”大工さん”と書いていた幼少時代を思い出しました。
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今回は、伝統ある加茂桐箪笥の工場「茂野タンス店」さんの桐木工教室についてご紹介しました。引き続き、ヤマグチが得た田上町のモノ・コト・ヒトを少しづつ発信、共有していこうと思います。
もしお時間ありましたら他の記事や町のHP・SNSなども覗いて頂けたら幸いです。
田上町について、お時間を割いて下さりありがとうございました。
地域おこし協力隊のヤマグチがお届けしました。