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70歳でオープンした「ギャラリーみたいなギャラリー」

こんにちは。
田上町たがみまち 地域おこし協力隊のヤマグチです。

まちの幹線道路沿いにある商店跡地に、数ヶ月前から突如貼り出された「ギャラリーみたいなギャラリー」の手書き看板。

ヤマグチが田上町に移住した時からすでに閉店していたこの商店。

気にはなっていたが、何となくタイミングが合わずスルーしていた時、たまたま取材していた農家さんから情報をいただきました。

「あいつはうまいよー。よくあんなの描けるわ」

後日スルーしていたことを若干後悔しながら、「ご自由にどうぞ」と書かれた案内に甘え、アポなしでいざ入店。

年季の入った自動ドアの先には、50年以上の歴史が詰まった、素敵でどこか懐かしい空間が広がっていました。

商店から生まれたギャラリー

「こんにちわー」と自動ドアをくぐると出迎えてくれたのは、部屋いっぱいに飾られた大小様々な油絵

思わず「すご」と独り言のように声が漏れるヤマグチ。

室内はよくあるコンビニより少し狭いぐらいでしょうか。ただ棚や家具などがほとんどないせいか、広々とした空間に感じます。


四方に様々なサイズの油絵
ざっと見ても30〜40点はありそう


そして左手を見るとなんと店主が油絵を絶賛創作中

これは巷で言うところの“ライブペインティング”というやつでは!?と、若干興奮しながら改めて挨拶をすると、「——おぉ、こんにちわ。若い人が来てくれるとうれしいねー」とゆっくりとした足取りで部屋の電気をつけてくれました。


果物を描いていた店主
椅子とパレットを置く机は段ボール
弘法筆を選ばず


「いやーすごいですねー」としか感想が出てこない自分にがっかりしながらも、まずは絵を鑑賞。

まずパッと見てわかるほどに「畳」を描いた作品が多い。

ヤマグチは特別絵に詳しいわけではありませんが、その絵に対して興味のありなしぐらいは感じます。
なんだかとっても気になり、「このシーンを切り取ろうと思ったのはなぜだろう」と想像してしまいます


新聞紙で作ったカブトが畳の上に
モチーフがおもしろく、畳の目や新聞紙の細かな書き込みもスゴいです


そしてなにより、絵が飾られているこの場所。

ところどころに残る商店のなごりが個人的にはたまりません……


ここには色々なお酒が並んでいたんでしょうね
こちらは元ギフトコーナー


他では味わったことのない空気が流れているこの場所に、得体の知れない魅力を感じずにはいられませんでした。

これはぜひとも生で味わっていただきたいです!


・・・

地元で愛された50年

「どんな絵がお好きですか?」

絵を眺めていると店主は描いていた筆を置き、声をかけてくれました。

「いやー詳しくはないんですが、この畳の絵は見ちゃいますね……」

そんな会話から始まり、自分が地域おこし協力隊であること、以前からこの場所が気になっていたことなどを伝えると、「まぁ座ってください」と麦茶まで出していただき、詳しくお話を聞くことができました。


もう売れてしまったという昔の作品の写真


現在ギャラリーとなっているこの場所は、元は地元密着型のいわゆるミニスーパー。
いまの店主「コイケさん」はその3代目。
20歳の時に店に入り、70歳になった昨年の2021年まで50年間、奥様と店を切り盛りしていらっしゃったそう。


営業していた頃の様子(2011年撮影)
出典:googleマップ


「刺身は特にこだわってたかな」と話すコイケさんですが、その他にも手作り惣菜や日用品などがそろう、この地域では人気のお店だったようです。


今よりだいぶお若い頃の写真とステキな似顔絵


しかし徐々に設備も古くなり、買い換えなくてはならい機材が増えてきたことをキッカケに、「体が元気なうちにやりたいことをやっておきたい」と店の閉店とギャラリーのオープンを決意

そして閉店の約半年後となる2022年4月に、それは実現されました。

70歳での再スタート——

30半ばのひよっこヤマグチにとっては、到底想像できない世界です。

当たり前かもしれませんが、「やりたいことがある」ことこそ、いつまでも元気に生きていける原動力なのかもしれません


ラジオが流れる中、お客さんと談笑するコイケさん(右側)


・・・

「見つめてあげればなんでも芸術」

「元々美術系の学校とか行かれてたんですか?」と聞くと「いやまったく」と即答のコイケさん。
本を買ったり、展示を見たりしながらすべて独学で今まで描いてきたそう

若い頃は風景画をよく描いていらっしゃったそうですが、店で働くようになってからは絵を描きにどこかへ行く時間もなく、自宅で何かモチーフを見つけて描くことが多くなったとのこと。

確かに飾られた絵の多くは、家の中の一部を切り取ったような作品が多い印象でした。


27歳頃に描いた風景画
飾られている中で1番古い作品だそう
「若い頃は辛抱強かったから描けたけど今はもう無理かな」
そう言って説明してくれた折り鶴と畳の作品(左上)
制作期間はなんと半年!


取材後に見つけた地元新聞の記事には「人に見捨てられるようなものを掘り起こしたい。見つめてあげれば何でも芸術になる」とコメントしていらっしゃいました。

コイケさんの目に、この世界はどう写っているのか……一度目をお借りしてみたいものです。


これも自宅の一角でしょうか
どこか懐かしような、さびしいような…うまく表現できず悔しい


・・・

最後に

こういった創作活動についていつもヤマグチが思うことがあり、そのまま質問してみました。

「絵って描こうと思えば終わりがないじゃないですか?何をもって完成としているんですか?

するとコイケさんは笑いながら教えてくれました。

いや、完成はないねー。ほら、夜とかに詩を書くじゃない。それで朝起きてその詩を見てみると丸めて捨てちゃう。『オレはなに書いてるんだ』って。時間が変われば気持ちも変わるし、年を取ればなおさら。だからその時に納得いくまで描くだけ

コイケさんと自分なんかを並べるのも失礼ですが、日ごろ文書を書いたり、写真を撮ったりしていると常に感じる「これでいいのか」という葛藤。

そんな漠然とした不安に、人生の大先輩からシンプルで明快な回答をもらえ、安心したと同時にすこしだけ嬉しくもあった1日でした。

・・・

今回は、地元商店の跡地にできた「ギャラリーみたいなギャラリー」へお邪魔し、お話を伺いました。引き続き、ヤマグチが得た田上町のモノ・コト・ヒトを少しづつ発信、共有していこうと思います。

もしお時間ありましたら他の記事や町のHP・SNSなども覗いて頂けたら幸いです。

田上町について、お時間を割いて下さりありがとうございました。
地域おこし協力隊のヤマグチがお届けしました。


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今後もnoteを通して、小さなまちの小さなお話をお届けできればと思います。


今回お世話になった方
【ギャラリーみたいなギャラリー】googleマップ
※不定休

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