”1時間で完売”したコシヒカリの生産者は小学5年生
こんにちは。
田上町 地域おこし協力隊のヤマグチです。
皆さんは「学校田」という言葉に耳なじみはありますか?
学校田とは幼稚園や小学校などが管理する田んぼのことです。
学校の課外授業などで田植えや稲刈りを体験したことのある方もいらっしゃるかもしれません。
ヤマグチが住むまちにもその学校田があり、先日収穫されたお米の販売会が行われました。
当日は販売開始前からお客さんの行列ができ、お米はわずか1時間ほどで売り切れに……
5月の田植えからはじまり、稲刈り、そして販売までこなしたまちの小学5年生たち。
その活動を約半年にわたり追いかけた結果、ヤマグチも多くのことを学ぶことができました。
今回はそんなまちの学校田のお話をご紹介と思います。
主役はまちの小学生
ヤマグチが住むまちには小学校が2校あります。
今年(2022年)に創立150周年(1873年開校)を迎えた「羽生田小学校」と、来年(2023年)に同じく150周年を迎える「田上小学校」の2校です。
現役の公立小学校として最も古い小学校でも1868年開校とのことなので、2校ともかなり歴史ある小学校だと、つい先ほど調べて知りました……
今回学校田でお米づくりに取り組んだのはこの2校の5年生。
各校約40名のみんなと初めて会ったのは、気温が20度を超える日もチラホラと出てきた5月の田植えでした。
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【5月】田植え
5月某日。
水が張られた学校田に半袖短パン姿で5年生のみんなが登場。
今の時代、田植え機を使った田植えが当たり前ですが、学校田では使いません。昔ながらの素足で入って手で植えるスタイルです。
「はーいじゃあ、みんな田んぼに入って植えてくださーい!」と号令がかかると、ためらいながら泥の中に一歩目を入れた子から気持ちのいい大絶叫が響きます。
「うわー!!気持ちわりー!!」
「クモがいるクモ!!」
「足が抜けないー助けてー!」
「だめだ、わたし無理だわ!」
みんなには悪いと思いながらも期待通りのリアクションが見られて、ヤマグチ的には非常に満足。動画で共有できないのが残念です。
しかし初めは悪戦苦闘していたみんなも、徐々に慣れて順調に苗を植えていきます。
賑やかな田んぼが気になったのか、近くのベテラン農家さんも緊急参戦。
「左手で苗を分けて、右手で植えるんよ、ほれ」と言いながらものすごいスピードで苗を植えていくお父さん。
苗をさばく分厚く頑丈そうな指先から、長い長い歴史を感じます。
そして終わってみれば1時間もかからずに無事田植えは終了。
みんな泥だらけの足や手をしっかり洗って、それぞれの学校へ戻ります。
次にみんなに会うのは4ヶ月後の9月。稲刈りです!
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【9月】稲刈り
「あーこんにちわー」と声をかけられまずびっくり。
数ヶ月ぶりなのに憶えてくれている子は憶えているんですね。
久々にやってきた学校田はきれいな黄金色に変わっていました。
おいしいお米までもう少しです。
田植えと同じく稲刈りも昔ながらの鎌を使っての手作業です。
「親指は絶対に上にして稲をつかんでね!下にすると親指がなくなるよー」
怪我なく稲刈りを進めるため、しっかりと農家さんがみんなをビビらせます。
みんなで1列に並んで、稲刈りがスタート。
すると田植えの時とは大違い。
ザクザクと次々に狩られていく稲たち。
スピード自慢のメンズたちに至っては稲刈り競争を始めてます。
あっという間に稲を刈り終えると次はその場で脱穀。ここではコンバインの力を借りて作業です。
みんなで刈り取った稲の束をひたすらコンバインに運びます。
しかしこれがなかなかの単純作業。
ただ集めて持っていくだけですからね。
稲刈りでは我先にと作業していたみんなもさすがに飽きたのか疲れたのか、終盤になるとワラのベッドで休む子が続々と登場。
身体も心も大人になってしまったヤマグチは「それチクチクしないの?」とか思いましたが、実際は「あったかくて気持ちいい」そうです。
機会がありましたら皆さんもぜひお試しください。
脱穀も終え、学校田での作業はこれにて終了!
来月はついに精米されたお米の販売会が行われます。
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【10月】販売会
「あ、こんなに並ぶんだ……」
会場の道の駅に着いて思わず独り言。
販売開始30分前の9時過ぎに到着するとすでに会場には大勢のお客さんが列をつくって販売を待っていました。
正直ここまで人気だとは知らずびっくり。
学校田のお米、甘く見てました。ごめんなさい。
今までは別々の場所で田植え、稲刈りをしていた田上小と羽生田小のみんなでしたが、最後の販売会は2校の5年生が集まり合同での販売です。
お客さんが行列をつくって販売を待つ中で、みんなもテンションがかなり上がっている様子。仮装をする子やのぼりを持って客引きをする子など、販売前からすでに会場はワイワイガヤガヤお祭り状態です。
9時30分。ついに販売スタート。
田上小、羽生田小それぞれみんなが作ったお米には素敵な名前が付けられ、オリジナルのラベルも貼られていました。
「田上の水晶を2つ下さーい」
「いくつまで買えるの?2つ?じゃあ王の米2つで」
基本は皆さんまとめ買い。買えるだけ買っていくスタイル。次々とみんなが作ったお米が売れていきます。
そして2校のお米はものの1時間ほどで見事に完売。
しかし、半年間のみんなのがんばりを知っている人なら食べてみたくなるのは当然です。
そのモノが出来るまでのストーリーをしっかり伝えることは、とてもシンプルだけどやはり購買の原点だなと改めて感じます。
この学校田の取り組みは、学校や生徒のみんなにとっては学習の一環でしかないかもしれませんが、取材させて頂いたヤマグチにとっても、とてもよい勉強、経験になりました。
——学校田、奥深い!
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最後に
販売会の写真を撮ってまわっていると「ちゃんと買いましたかぁ?」と女の子3人組の抜け目ない営業を受けました。
「撮ったら買うから!大丈夫!」
そんなことを言っておきながら、もうちょっと撮影に夢中になっていたら危うく完売するところでした。ありがとう、3人組。
泥だらけになりながら田植えをしていたみんなを思い出しながら食べる新米の味は、もちろん格別でした。
おかずがいらないくらい美味しいお米でしたが、ここに“学校野菜”とか“学校味噌”とかあれば、最高の定食が出来そうです。“学校ニク”は……さすがに難しいでしょうか。
無責任な妄想は尽きませんが、しばらくは美味しいお米を楽しみながら、この素敵な行事が毎年続いていくことを願いたいと思います。
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今回は、小学生たちが田植え、稲刈り、そして販売まで行うまちの学校田についてご紹介しました。引き続き、ヤマグチが得た田上町のモノ・コト・ヒトを少しづつ発信、共有していこうと思います。
もしお時間ありましたら他の記事や町のHP・SNSなども覗いて頂けたら幸いです。
田上町について、お時間を割いて下さりありがとうございました。
地域おこし協力隊のヤマグチがお届けしました。